我に七難八苦を与えたまへ

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戦国時代の山陰の武将 山中鹿之介。子供の頃から麒麟児として認められるほど武芸教養に秀でた人物。正々堂々と生きた人生は勝つことに注視したが、どんな手を使っても勝とうする卑しさはなかった。こだわっているのは何度でも立ち上がること。不撓不屈、この一点に絞っていた。だから「願わくば、我に七難八苦を与えたまへ」という熱い言葉を残す。これは何度やっても上手くいかない時に、それでも最善の努力をしていくしかない。本気でやったら勝とうが負けようが意味が生まれてくる。一番大切なことは自分が立てた志を自分で裏切らないこと。誰かに夢を踏み潰されたとしても決して折れずに自分を信じて努力しよう。人はともすれば挫けやすいもの。いわゆる困難だと言われるものを避けて通ろうとする。どこまでも弱気にならずに生きた方がいい。ただただ純粋に夢を追っていく。私はこの言葉をそのように理解している。

ところで美術の世界はスポーツの世界とは違い、求められる具体的な才能についてはっきりとしないもの。なんとなく曖昧なままで一般的にはわかりづらいと言っていい。美術家になるためには上手に創作のスイッチを入れる機会をつくることだ。つまり目の色を変えてやるべきことを見つけていこう。大きな壁を乗り越えることができた達成感を求めていくのだ。より手応えのある幸福感とは、自分をとことん追い込んだ危機感の先、窮地に追い込むことで得られるのだろう。だから山口県美術展覧会への応募することは、どんな結果になったとしても、美術家を目指す人にとって成長に値する。第三者の評価がない、なんでもかんでもいい、自由でフラットなステージが増えたこの時代に、わざわざ試練に直面していくことは素晴らしいことだと言いたい。山中鹿之介の志と同じで七難八苦を楽しんでいる。常に高いレベルへ向かって進んでいく。自分らしい創作へ挑戦することで、新しい境地は開いていくだろう。