赤裸々に

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40年前、県立美術館の開館記念展は「狩野芳崖展」だった。当時、美術館準備室時代から関わった方に、少しでも狩野芳崖という人間性を知るために、生の証言を求めて東奔西走したお話を聴いたことがある。さすがにリアルタイムの会った人はいないけど、どんな小さなことでもいいから知ることで、残されている様々な文章(記録)などに魂が宿って、ぼんやりとしたイメージにわずかでも肉付けできて、ざっくりとした人物像がそれなりに浮かんでくる。だからまた聞きでも、またまた聞きでも、米粒程度ことを馬鹿にしていけない。ある時は考古学者であって、ある時は推理探偵でもあって、その他、いつも変幻自在に立ち回り、自分たちができる可能な限りを調べて尽くし、たくさんの仮説を練っていく中で事実に近づいていく。美術館の仕事ってこんな面白い仕事はないんだよと、高校生だった私に熱い思いを赤裸々に語ってくださった。

今、私は超絶技巧の画家 吉村芳生さんのことについて、私なりに新しい発見・・・、いや、想像以上に多い再発見を楽しみながら学んでいる。実際に吉村さんとお会いして美術談義したこと、大星君や奥様の証言によって知ったこと、そして、美術評論家から一般鑑賞者までが語った言葉を重ね合わせて、吉村芳生という美術家の人生について幅広く考えて勝手に熱くなっている。画家という職業は知れば知るほど、やはり過酷なものだとしか思えない。十進九退という仏教用語ではないが、十人に九人は諦めるほど美術の道は困難もの。だけど、それでも挑戦したくなるのは、それだけ素晴らしい魅力がある。吉村さんの生き様を研鑽すればするほど、虜になってしまうことが確信できる。そんな世界だからこそ、夢を持って進むべきだ。強い願望があってこそ、挑戦していける。天からそんな声が聞こえてくる。さあ、頑張っていきましょう!

■HEART2019の関連企画 県美界隈展 『花』、Y氏とともに 2020年2月13日(木)~3月1日(日) 11:00-18:00 火水定休