立志

f:id:gallerynakano:20200319001109j:plain


「散歩のついでに富士山に登った人はいない」とは、事前準備をきちんとしていないのに、ふらっと気が向いたからと言って、そのまま富士山に登ろうとしても、実際に頂上へ到達することが不可能だと意味である。私は美大進学を目指す若人に、この言葉を引用してエールすることが多い。いわゆるそれなりの名が知れた美大なら、運よくたまたま合格するなんてことはない。画塾などで基本的な能力を身に着けなければ、途中で力尽きてしまって挫折するだろう。およそ自分ができそうなことを知るために、みっちり鍛えて雌雄を決する受験に備えること。雪が降り積もる富士山の頂上を目指すくらい、準備に余念がなく整えて挑戦していこう!

そう、この努力は次のステージに立つときにも役立つ。なぜなら頂上(美大合格)へ行くことが目標ではない。登山とは下山するまでのことが一連の動作だ。目指した山頂に到達した後、今度は無事に帰りつくこと。美大進学はできたとしても、自分の家(なりたい美術家)に辿り着かなかったら、良い登山だったとは言われない。つまり下山という行動が成立して美術家になれるのだ。山の頂上は目的地として最適な場所。そこへ行くことは頑張ればできるかもしれない。しかし、下山して目指す場所は人それぞれ自由に選べる。偉大な先人から現役バリバリで活躍する人まで、様々なライバルや同士たちとは違う、自分らしい美術家にこだわって進むしかない。すべての実践は志を立てることから始まる。これから何をしたいのか、どういう美術を創りたいのかなど、自問自答を繰り返しながら、愛する美術へ情熱を燃やし続けて、ピカピカに感性を磨いていきましょう!

■ギャラリーナカノ42周年記念展 よにたち、よにたつ 2020年3月14日(土)~29日(日) 11:00-18:00 火水定休 出展者 加藤智子、佐々木範子、難波瑞穂、伴裕子、村上真実