開けていく

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家の中で愛くるしい動物と一緒に暮らしていると、いつもの間にやら動物が持つ、不思議な感覚に引き込まれていく。初めのうちはちょっと抵抗があったものの、言葉が交わらないやり取りは意外にも刺激的で、ググっとイマジネーションを大いに搔き立ててくれる。何か大切な約束ごとを確認し合わなくても、彼らは人間以上の純朴な心を持っているため、異次元のコミュニケーションを楽しめるのだ。人間界では味わうこのできないフラットな関係。野生の本能で適切な状況判断を発揮して、こちらが期待しているパフォーマンスで、やさしく寄り添ってくれたりする。人間相手では上手く付き合えない人でも、動物なら心を開いて仲良くやっていける。言い換えれば、心の奥深く交り合うことができれば、すべてのものと美しい友情が成立できるはずだ。

私はこのたびのグループ展に参加した難波瑞穂さんの作品「心の中の澄んだところ」を観てそのようなことを考えてしまった。その昔からウサギをモチーフにした作品は何度も観る機会があったが、彼女が年齢を重ねていく中で生命の核心に近づき、自分らしいイメージが広がっていった。いわゆる創作への機が熟してきたのだ。40代になったことで自分の心を静かに見つめて、落ち着いてやっていけるスタート地点に立った。見た目の綺麗な表層的に描かれたものではない。作品を通じて伝えたいコンセプトが何なのかが掴み始めている。いつまでも好きなものにこだわることで、無駄なものは削ぎ落されていくのだろう。これからも小さな生命を尊重し、そのあたたかい魂から創り出されていく、個性豊かな創作を楽しみにしている。

■ギャラリーナカノ42周年記念展 よにたち、よにたつ 2020年3月14日(土)~29日(日) 11:00-18:00 火水定休 出展者 加藤智子、佐々木範子、難波瑞穂、伴裕子、村上真実