エール!

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この春より始まったNHK連続テレビ小説「エール」。音楽に関して全くの門外漢な私でも、その名を知る国民的作曲家 古関裕而をモデルした物語。ちなみに、なぜ知っているのかと言われたら、幼少の頃から愛するタイガースの応援歌「六甲おろし」の作曲家だからだ。また、高校野球の「栄冠は君に輝く」をはじめ、早大の「紺碧の空」や慶大の「我ぞ勇者」、そして、某球団の「闘魂こめて」など、昭和時代に野球にかぶれた人なら、誰もが一度は耳にした曲ばかり創った音楽家。だからついついまじまじと見てしまう。朝からドラマに思いっきり入り込んで堪能している。

今週、そんなドラマの中でヒロインが「私は結婚できなくてもいいから夢を追いかけたい」と言えば、母親は「夢を掴める人はほんのひと握りだけ。あとは私のように人生に折り合いをつけてながら生きるしかない」と応えたシーン。あまりにも真っすぐに現実の厳しさを言い表し、一瞬でこの世界の重要事項を説明してくれた。たしかに高い目標を持って行動するのはとても素晴らしい。こつこつと前向きに努力していけるし、それなりに評価されて認められるはず。だけど、どんなことでも外で見ていると簡単そうだが、実際にやってみると苦労してしまう。このような現実を達観した境地から言い表したのだろう。なんとも芸術に夢を見て目指す人にとっては耳が痛いもの。創意工夫なくして未来に美しい花が咲くほど甘くはないのだ。

つまりプライドの高さに見合う生き方とは、眠った時の夢でしか出会えないもの。ただひきこもってひとりだけで悪戦苦闘しても何も実ることはない。言い換えれば、リアルな世界の美術家として生きたいのなら、あらゆる才能を試すことのできる環境していくこと。いろいろな個性を持っている人たちと交遊して、世界観を広げてバランスが取れていく。ひと握りの人間になるための最善の手段とは、ひと握りの人間になるために努力し続けること。生まれ持った才能以上に、やる気を持ってやることが大切なのだ。