新世紀へ

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昭和時代を代表する作詞家と言えば阿久悠氏だ。その生涯の中で創作した詞は五千曲以上で、世に数々のヒット曲を送り出していった。そんな阿久悠高校野球を長年に渡って追い続けた。春と夏の甲子園大会が始まったら、毎日テレビの前に陣を取り、朝から晩までずっとゲームを観戦していたと言われている。そして、その日もっとも印象に残った試合の敗戦チームに対してメッセージを書き綴った「甲子園の詩 敗れざる君たちへ」。スポニチの名物連載と知られていた。縁もゆかりもない球児たちを鋭い視線で見つめて、彼らの戦いぶりを素敵な言葉で約27年間も刻んでいった。

その中にある「新世紀へ」。2000年8月21日の作品。「高校野球はもしかしたら二十世紀の偉大な発明かもしれない。人間の祭典として完成品が競いあう場でなく、未完成品が未熟を超えて、人々に夢や感動を与えるのだから。これは世界にも類を見ない素晴らしい発明だ。未完であり未熟であるものが、完成したり成熟したりする。その経過や瞬間に心ときめかす場が他にあるだろうか。ありはしない。少年が演じる奇跡や敢闘の素直な涙に、胸熱くする人々に支えられ、未完は完成よりも希望が多く、未熟は成熟よりも未来があると。(後略)」。私は毎年、夏の甲子園大会が終わった頃に読みたくなってしまう。なぜなら、それだけ球児たちへの素晴らしい賛歌だから。夏の燃えるような陽ざしを浴びて、大きく成長する若者の姿を美しく表現している。

今年、夏の甲子園大会がなかった年に、我が母校野球部は代替大会で優勝する。新型コロナ感染症のために臨時休校や対外試合禁止など、様々な苦しい環境を乗り越えて、また、ひのき舞台に立てない悔しさにも堪えて、最後までよくゲームに集中して頑張ったのだ。選手諸君おめでとう!この大会を通じてひと回りふた回りも大きくなったから勝てたんだ!どうかこの経験を3年生は次のステージで、下級生たちは甲子園へ行って、発揮されることを楽しみにしている。フレー!フレー!球児たち!