寂滅為楽

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子供の頃からお笑いコンビのダウンタウンの大ファン。子供に見せたくない番組と言われた「ごっつええ感じ」を見ては、小学校の休み時間は友だちとよく話題にしていた。また、高校時代は口元と輪郭が浜ちゃんに似ていると言われて本気で喜んでしまう。やっぱりお笑いって最高だ。人を喜ばせるものはとてもカッコいい。ギャグを見た瞬間に日常から大きく引き離されて、なんとも気持ちのいい快感が味わえる。ついつい「こいつぁ極楽だ、極楽だ」と口ずさみたくなるもの。それくらい、どっぷりとお笑いを楽しんでいる。いや、愛していると言うべきレベルだろう。

そんな彼女は見た目よりも遙かにサービス精神が豊富で、いつも個展のテーマは来場者をアッと驚かせること。エキセントリックな空間を創り出して、ワクワクドキドキと興奮させてみたい。例えまったく上手くいかなくても、それならそれで駄目な奴だ笑って欲しい。よくある無難なもの展示して、無難な評価を得ようなんて思わない。人はそれぞれ面白いことはみんな違うもの。どうやったら受けるのかに惑わされてはいけない。普通に裸の魂で生きていれば、自然と個性は発揮されていく。個性的かどうかなんて気にしなくていい。みんなその人にしかできないことで勝負すればいい。

このたびで4度目になる個展。過去3回とは大きく違った構成になった。イケイケのロックンロールから、しっとり聞かせるバラードへ路線変更したくらい、これまでやらなかったことへ挑戦していった。ちなみにそれは真骨頂であるテクニカルなもの。とてもわかりづらい地味なもので、かつ、理解できる人でないと素通りされかねない。まるでリアクションのあるコント仕立て漫才から、ネタの結末はわかっているのに、抑揚のある話し方で笑わせる古典落語をわざわざ選んだ。なんと勇気のある行動なんだ。想定外の裏切りに感動させられる。そう、なんでも振り幅が大きい方がいい。予想できないから観る者に想像力を要求されるからだ。彼女に完全に一本取られてしまった。恐れ入りました。