一足す一が二

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「一足す一が二、二足す二が四だと思いこんでいる秀才には、生きた財政は分からないものだよ」とは、大正 昭和期に財務大臣内閣総理大臣を務め、稀代の財政家 高橋是清氏の言葉。さすが、たびたび国家の機器を救い、財政に詳しいだけではなく、人が生きる経済について深い理解があった方だ。若い頃から苦労をされて、現場で叩き上げてきた経験がものをいう。それゆえに、さまざまなデータを分析しただけで一見は理屈は通っているが、実際には過去の似たような事例にならって処理することが多くため、あまり役に立たない経済対策だと言いたいのだろう。

ちなみに美術も「一足す一が二」になるほど単純明快な世界ではない。既成の価値観の中から何かを創り出そうとしたら、どこかで観たような垢ぬけない雰囲気が漂い、独創性や新鮮味に欠けてしまって「一足す一が二分の一」になりかねない。だから美術家になるために必要なのは、自分らしい人生を堂々と歩んでいくこと。どんな人生であったとしても問題はない。とにかく、自分で経験によって育まれた感覚がなかったら何もできない。過去の素晴らしい作品は、そんな感性を持ち主を触発して、創作意欲を目覚めさすためにある。そう、美術への情熱を発火させて燃え上がっていけるのだ。つまり、自分で経験したことを第一のベースにして、いろんな創造からの刺激を受け入れながら、美術の世界へ一歩踏み出すことで新たな可能性を求めていく。自分にしかない個性を武器に創作活動をしていこう!

■難波瑞穂展 これから私はあなたとともに 2020年9月18日(金)-27日(日) 11:00-18:00 (最終日 17:00まで)