ええころ

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「ええころ」とは、ポピュラーな山口弁として知られている。その意味は「いい加減な」で、本来の頃合いはちょうど良いさじ加減のこと。ほどよく適切なバランスが保たれた状態を言い、相手を尊んた時に使う好意的な言葉だった。しかし、いつの間にやら「いい加減」が無責任の形容にかわり、ネガティブな意味が込められて、残念な言い回しになってしまった。私は、とても柔らかい語音の響きもあって、「美味しい」や「いいね!」の類義語になるだけに、あらためて良い意味で使われることを期待している。

ところで、このたびで3年連続で個展を開催する吉田朱里さん。初めての頃に比べて明らかに作品の個性は磨かれてきた。モニョモニョとした不思議な感覚がパワーアップした。実のところ、芸術短期大学卒業後は、どこにも就職せずに創作活動を始めた。社会人経験がないことは大した問題ではない。しかし、自由自在に生き過ぎると、自分勝手な考え方になったり、好きなことしかやらなくなる。そうやって、自分の世界にどっぷりと浸かり、成長しなくなることを私は心配していた。

3年前、彼女は結婚したことで、これまで見えなかったことが見えはじめる。ご主人の何気ない言葉に刺激されて、内面的ものが豊かに変化していった。そして、浮世ばなれしたことばかり想像していたのに、働きもののご主人に影響されて、足が地についたというのか、現実と空想のバランスがよくなってきた。ええころあいになり始めている。まだまだそうでない面もあるけど、それはこれからの伸びしろだろう。このまま二人三脚の力で頑張っていきましょう!