鎧を着た旅人

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「旅行や交易、戦争や移住・・・・・。空を介して繋がっている無数の国々は、時に摩擦し、乖離(かいり)し、再び混ざり合っては、新しい文化を生み出してきました。世界中でそれは起こってきたし、きっとこれからも起こるに違いありません。思いもしなかった時代や文明が繋がった時に、世界は少し違った姿で見えてきます。さあ、別世界を旅行しましょう。鎧を着た旅人が呼びかけます」という美術家 野口哲哉氏の言葉がある。

今週末の13日(日)まで県立美術館で開催中の「野口哲哉展」。単独で取り上げた展覧会の中で一番若い美術家だ。 その作品は鎧と人間をテーマに、伝統的な形式とサブカルチャー、虚と実の狭間を行き来しながら、現代性や人間性を問いかけていく。いつの時代も人が抱える様々な感情を、豊富な知識をもとに編み出した独特な世界観で表現している。そんなエキセントリックな作品を観れば観るほど、そのユニークなセンスと感覚にどんどん引き込まれる。少年が夢中になってつくったようなピュアな作品に魅力されていく。真っすぐに好きなものを追いかけているからこそ伝わる高揚感が微笑ましい。もしかして、創作とは再びやってきた少年時代と同じなのかもしれない。なぜなら、単純に自分の才能を信じて生きることでパフォーマンスがよくなる。自分はすごいと心の底から思い込むことで、美術の世界を希望に満ちた旅することができるからだ。