恩送り

f:id:gallerynakano:20211017232121j:plain

7年と少し前、年に1度だけ山口大学で講義していたおかげで、週末のギャラリーには学生さんたちがよく出入りしていた。今より学生さんは自由な時間を持つことができる時代。それなりに出会いを求めていた。私はお客様がいない時だったら、あれこれとお話しをして、コミュニケーションに心がける。若者の文化を学ぶチャンスと位置づけて、思いっきり頭の中を活性化させていった。
そんなことをしていたある日、来店された吉村芳生さんに「俺の後輩(山口芸短)も応援してくれよ」と言われたので、速攻で二つ返事でお約束する。ところがそれから間もなくして、吉村さんは天へ旅立つ。まさかまさかの出来事。言葉を失ってしまうばかり。あまりにも大ショックで、残念無念で悲しかった。
その翌年、吉田朱里さんが私の前に現れる。海のものとも山のものともつかなかったけど、暗いオーラに創作への一途な思いを感じさせられた。それともうひとつ、大事なことを思い出す。吉村さんとの指切りげんまん。そうか、恩送りのチャンスなのだ。受けた恩は直接返すことができないから彼女に送ろう。私は腹をくくった。とことんやってやろうと覚悟したのだ。それから丸6年が経ち、私にエールを送られた吉田さんが今度は後輩にエールを渡していく。そう、恩というものはぐるぐる回っていくもの。昨日はそういう因果を感じることが何度もあった。なんて不思議な1日。きっと、ここには言霊が響き渡っているのだろう。