青雲の志

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2009年頃からギャラリーでは、若い美術家を支援する作品展を企画が増えてきた。そのきっかけは臼杵万理実さんと出会いに始まる。当時、彼女は大学4年生。卒業後の創作活動の展望が開けなくて迷っていた。そこで私なりに最善だと思えることをアドバイスしたが、振り返って思えばその内容を綻びだらけで、過去の経験に頼った時代遅れのものだった。それでもここに出入りする様々な人々にフォローしてもらい、その都度、一番良いと思えるものに挑戦していった。本当に手探りの繰り返し。ここでできることを試しながら粛々とやっていった。そうこうしていくうちに、同じ志を持つ若い仲間と次々に出会った。都道府県の高齢化率で上位で、人口減少が続いているこの土地で、感心するほど若い世代の美術家と知り合うことができた。

その中のひとりである吉田朱里さん。この12年間の折り返しとなる6年前に出会う。絵を描けて陶芸も制作してデザインもできるというマルチぶりは今と同じで、彼女なりに創意工夫と試行錯誤を日々を積み重ねていた。私は初めて作品を観た時に一番感じたことはユニークさ。意外とできそうでできない世界観で、粗削りながら個性豊かに表現していた。それともうひとつはハングリーさ。人を押しのけてやってやろうやファイトを表面に出すことはないが、少しでも向上しようとする姿勢は天晴れなもの。いつもピンとくればすぐにメモをして書き残す。小さなチャンスをこつこつ掴もうとして頑張っていく。まだまだ課題はたくさんあるけど、それは苦しみというより楽しみ。時間という限りある資源を上手く使い、美術にワクワクしながら向かいあっていけばいい。