くすぐる

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先週、あるバラエティー番組にベテランお笑いタレントの小堺一機氏と関根勤氏が出演。キャリアの長いお二人の思い出話を中心に数々のエピソードが披露された。その中で二人の息の合った不条理なジョークのやりとりについて、「クラス会で小学校の友達と会うと小学生に戻るじゃん。そういう感じで、(二人が会うと)いっつも中学生に戻る、気持ちが」という関根さんの言葉に、私はあることを思い出して、手を叩いて頷いてしまった。

それは12年前、臼杵万理実さんと出会った頃に、絵を観せてくださいと言ったところ、彼女は天然であるため、幼児から大学生までの作品をいくつもの風呂敷にくるんで持ってきた。私はその行動にどうしても美術家になりたい気持ちの表れだと感心した。そこで予定時間をはるかに超過して丁寧にじっくりと観た。すると中学時代がピークで、どんどん絵を描く熱量が下がっていくことに気付く。

もちろん、技術的には進歩している。だけど、画面の迫力は低下する一途。とにかく暗い印象を与えるものが目立った。その理由は簡単。ただ、熱量が足らないだけ。夢や希望を見失っているから、作品に情熱が感じられない。臼杵さんらしさを感じられなかったのだ。それはそれでマイナスではない。この時に苦しみを味わったことで、地道に努力する姿勢が身についていった。ちなみに今現在の彼女は、創作する際には小学生のように伸び伸びしている。童心に満ちた好奇心に溢れた感覚で描いている。つまり、一番活き活きしていた時代にタイムスリップしているのだ。そんなことを何気ないテレビ番組で気付くことができた。さすがコサキンは感性をくすぐる名人。臼杵さんも作品でほのぼのしくくすぐってくれる感性がいい!