屏風のトラ

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私が子供の頃に流行ったアニメ番組「一休さん」。三大とんち者の一人と言われ、数々のとんち話を残している。その中の1つ「屏風(びょうぶ)のトラ」。ある日、殿さまが一休さんのとんちの評判を聞いて、お城に招き入れて、一休さんに夜な夜な屏風から飛び出すトラを縛って捕まえてくれと頼んだところ、一休さんはねじりはちまきと腕まくりをしながら、「トラを屏風から追い出してくださいといい、殿様の無茶ぶりをとんちで難なくかわしたのだった。

今年は寅年ということもあってこのお話しのことを思い出す。とんち(頓智)とは、その状況に応じて即座に出てくる知恵のこと。いわゆるベストアンサー的なもので、場の空気を明るくするユーモアを感じさせてくれるエッセンスだ。

私は冗談がわかる方と美術談義する時は、作品の本質から脱線しないようにしながら、とんちの利いた感覚をいろいろと盛り込んで、できるだけ楽しく話すように心がけている。特にアウトラインぎりぎりの微妙な感覚を使って、どこかハッキリしないけど、なんとなくわかるような雰囲気をつくりだし、頭のてっぺんをくすぐる感じで面白がっていこうとするのだ。要するに作品を解釈する幅をできるだけ広くして、さまざまな視点から考察することで、これまで捉われていた固定観念を解体し、新しい発見を楽しむことをモットーにしている。一休さんのようなクオリティーが目標だ。