推し、萌ゆ

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先週末、NHK Eテレ SWITCHインタビュー 達人達は、英国でも活躍するバレリーナ吉田都と「推し、燃ゆ」で芥川賞を受賞した新進気鋭の作家 宇佐見りんが対談。いわゆる「推しを推す」という言葉は、自分の好きな人や物を応援することを指す。アイドルユニットの中の一推しのメンバーが推しメンと略され、そこから推しだけで使われるようになって、さらに人だけではなく、さまざまな分野で幅広く使われている言葉である。

私はよく知らないお二人だったので、冒頭からぼんやり見続けていたのだが、 宇佐見さんの「私の人生には、あの時間があるから生きていけるというような瞬間がいくつもあるのですが、都さんが指導者として出演したテレビ番組「スーパーバレーレッスン」も、その一つです。都さんの踊りは圧倒的な気品に満ちています。それも、固く冷たい品ではなく、柔らかな品格。それは「雰囲気」「オーラ」などという曖昧なものではなく、高い技術、意識によって表出させているものです」という熱量の高い吉田さんへのメッセージに引き込まれて、思いっきり見続けてしまった。

やはり推しと呼ばれるものがある人は、そのことに没頭できるからエネルギッシュでいられる。来る日も来る日も変わりばえのしない日々に、新鮮なアクセントを醸し出し、メリハリのある豊かな人生になっていく。だから、推しと向き合うかけがえのない時間は、自己の存在をあるがままに、前向きに肯定するために必要だと言える。推しよって重苦しいしがらみから解放され、軽やかな気持ちになって、自由なひと時を満喫できるようになるのだろう。表面的なものでは絶対にわからないようなものに出会った時に、(推しは)私ひとりじゃないと思えるからは救われる。大先輩の吉田さんの「諦めない」という気持ちに推されていく。ただいま勉強中の「推し」について楽しく学ぶ番組であった。