窯焚き

f:id:gallerynakano:20220412224619j:plainのづくりする人の創作へのエネルギーは、いつも内面からあふれ出てるもの。その人にとって本当にできる限りのことを、意欲的にやってやろうという熱意から生まれてくる。それは決して長年培った技術力やこれまで創り出した表現力に頼るものではない。その時に感覚的に浮かんだイメージから着手して制作しようとする。さまざまな可能性の中で今一番にしっくりとくるものを選ぶことで、身体と精神の繋がり、好奇心が搔き立てられて、心の内側から創造への熱量がほとばしるのだ。

とにかく、慣れることからくる惰性に気を付けよう。誰でも初めては新鮮でワクワクするけど、やればやるほど打算が発生するため、いつの間にかいい加減なやり方になっていくことが多い。だから、自分自身をサボらせないようにすること。過去の経験は一旦はリセットして、常に一からやるつもりで真摯に取り組む。新しいものに挑戦ことが創作する人にとって最大の醍醐味。初心者のように謙虚な気持ちで、純粋に制作と向き合うと不燃物がなくなり、鮮明な世界観を創り出すことができるはずだ。

昨日の午後、萩焼陶芸家 大和潔さんと佳太君親子の明善窯で、今年初の窯焚きの現場に差し入れを持って参上。約500点超の素焼きされた作品を慎重に窯入れし、約1100度の温度を保つために温度計を見ながら、的確なタイミングで松の木を放り込むことを一昼夜にわたってしていく。春とはいえ、窯のそばの気温は高くて、自然と汗ばんでくる。しかも徹夜で交代しながらやるのだから究極の制作現場だと言えよう。そんな過酷な作業も明るいムードでいっぱいだった。還元焼成と天然の松灰によって生まれてくる優美な世界に思いを寄せていく。電気窯やガス窯では味わうことができない風合いを求めて胸を躍らせている。一期一会は茶会における心得だけではなく、茶碗を創る時にも通じる言葉だ。とことん初心を忘れないお二人の真剣な眼差しは実にカッコよかった。