なんのため

もし、「美術家はなんのためにギャラリーで作品展をするのですか?」と問われたら、「いろんなタイプの人たちと関わり合うことで、美術の世界観が自然と広がっていくため、創造力の豊かさに繋がるから意味があるのだ」と答えるだろう。いわゆる美術というものは、それぞれが唯我独尊で創ったり観たりできる世界。生まれ育った環境をはじめ、好き嫌いの好み、ものの考え方などが違ってもよく、そこから生じる自由で個性的な感覚を活かして楽しむことが大切になってくる。

だから、美術家の一員として、さまざまなことに触れていきながら、感性やセンスを刺激していく。どうすれば、創作活動を進めるための繋がりを育んでいけるのか。どうしなければ、美術コミュニケーションが円滑にできないのか。とにかく、なぜなぜの好奇心を大いに掻き立てて、興味のある分野が広げてみよう。そうやって小さな体験を積み上げていけば、いろいろな経験値が徐々に高くなって、美術という場で活動するためのコツというものを身に付けるのだ。

つまり、ただこの空間にいるだけでもいいのだ。まず、目で見えるものだけでなく、五感で感じるものを意識していく。なぜなぜの好奇心が掻き立てて、興味のある分野を新しく見つけよう。視覚だけの情報に頼り過ぎないで、思い浮かぶイメージで感じていく。なかなか慣れるまで安定してないけれど、常識や知識で凝り固まった感性を解き放ち、自分らしい価値観を探し出すチャンスになるだろう。そんな身近な美術と親しむ場になれるように、これからも精進していくのみである。