エンタメ

ひとくちにイラストと言っても、細かく種類をわけていったら、おびただしいほどの数があるだろう。その昔に一世風靡して華やいだものでも、時代とともにすたれていくものもあれば、初めは先駆け過ぎて見向きしてもらえなかったが、時代の好みに合って価値観が生まれるものもある。いわゆるこの世は栄枯盛衰の法則に照らせば明らかだ。ほんの短い年月のあいだだけでも、さまざまなことが自然淘汰されていく。また、その呼び名こそは変わらないけど、質的に大きく変わったものもある。あれほど巷で人気があったのに、今や風前の灯火なんてよくある話。なんとか風雪に耐えて、細々と生き延びられたら、それだけで十分だと言うべきなのかもしれない。

近年、デジタル技術が目まぐるしく進歩したため、イラストの世界はこれまで以上に新陳代謝が激しきなった。これまでの職人気質の割合が高かったものから、アイディアやユニークさが豊かなものへシフトが変わり、上手い下手という数多くの作品を観てきた経験値による判断から、面白いやカッコいい、楽しいなど、その瞬間、素直に感じることで判断していく考え方が主流になりつつある。つまり、イラストという業界が成熟してきたのだ。クライアント(依頼主)の強い要望に応えていく仕事内容から、前提条件として個性的な世界観が要求され、その分ほど、描く側の自由度が持てるようになった。なんでも引き受けてやるのではない。自らの個性の高いものを売りにするのだ。

イラストレーターのりおた君。彼は多様性が尊重される時代に出番がやってきた。子供の頃から絵のスタイルにこだわり、世間一般の価値基準に忖度しない性格。だけど、あんまり深く突き詰めて考えたりはしない。いろんなことで遊んだ時に感じたものを創作へ活かす。こんな感じでいいと考えていけば、なんとかやっていけそうな気分になる。ポリシーは実に単純なこと。自分のイラストを観てくれた人を喜ばす。絵を描く人なら一番やりがいのあることだ。イラストに難しい理屈はいらない。観た瞬間に感じたもので、思いっきり楽しんだらいい。人は愉快なものだから、それに気づかせるイラストで、楽しませたらいいのだ。