一燈照隅 萬燈照国

昨夜から2日間、3年ぶりに山口七夕ちょうちんまつりが開催される。私はこの場所で生まれ育ったため、お祭りは毎年当たり前にあると思っていた。もちろん、台風などで1日中止になることはあったけど、出口の見えないコロナ感染症での取りやめは、心も身体もアクセル全開に燃える真夏に、言いようのない不燃焼な気持ちにさせられた。

とは言え、大内氏がお盆の夜に先祖を供養するために室町時代から始まったお祭り。だから、これまでも山あり谷ありを繰り返してきたはず。さまざまな困難や危機にめぐり合いながら、山口市という街の文化を守るために、たくさんの人たちがそれぞれの力を出しあって、みんなの心が明るくなるように提灯に願いを込めてつるしたのだろう。

仏教用語に「一燈照隅 萬燈照国」がある。最初は一隅を照らすような小さな灯火でも、その灯火の数がどんどん増えて万になれば、国中をも明るく照らす力になるという意味の言葉だ。まずは自分がいる場所を明るく照らせる人になること。おのおのの小さな努力を大切にしていく。自分が今やるべきことに最善を尽くす。そうすれば、その頑張っている姿に多くの人たちが励まされていく。自分もできることやろうと刺激され、いつしかあちらこちらにも広がるのだ。このたびのお祭りも小さな善意が繋がって、大きな美しい輪になっている。やっぱり、お祭りはいいものだとしみじみと思わされた夜だった。