縁の下の力持ち

「レンガっていうのは真上に積んでいったら倒れるわけですよ。高くなってきたら横に積んでいかなきゃいけない。ところが横に積んだ人っていうのは評価されないし、見えないんですよ。上に積んだ人だけがやっぱり見えてくるからね。だからそういう、横に積む人たちがたくさんいるっていうのが、日本の強みじゃないですかね」というのは、サッカー日本代表元監督の岡田武史氏の持論である。
これは日本サッカーにJリーグが誕生して、海外の有名な選手や監督を招いたり、サッカーに集中できる環境になるなど、その時からいきなり強くなった印象を与えている。しかし、実際はその前からサッカーを愛する人たちが手弁当でやっていて、みんなが粛々と積んできたレンガの基礎を忘れてはいけない。どんなにすぐれたものがったとしても、それを活かす土壌がなければ何もできないという意味を指す。
ところで、ここ1ヵ月間は今年で市の文化施設に再生して30周年になるクリエイティブスペース赤れんがの資料を時間を見つけては勝手に研究している。ただし、その量はとても少ないため、当時を知る人にお会いしに行くが、それでもまだまだ不十分。そこで、こうではないかと仮説を立てて想像していると、これだけの耐久性があるレンガをつくった職人や上手く継ぎ合わせた左官業の方など、多くの縁の下の力に気付かされた。初代館長が先駆的な様式を取り入れたことばかり注目されていたが、よくよく考えてみれば、言われたとおりにつくり上げた見えない力がそこにはある。だからこそ、104年も建っているんだろう。