4年前、初めてコサカダイキ君の個展を開催した時、来場者が途絶えるたびにざっくばらんな話しをしていた。もちろん、コサカ君をよく知ることで個性や長所が把握できるし、作品の見どころをアナウンスするのに役立つからだ。
とはいうものの、あまりにもオリジナリティあふれる生き方に、思わず聞き耳を立ててしまうことの方が多かった。誰にでも自分の人生をテーマにした1冊の本が書けると言うけど、コサカ君の人生は創作人生を歩むにふさわしい内容であった。
まずそれは小学生の頃、絵が得意なコサカ少年の前に絵の上手い転校生が現れ、いつの間にか毎日イラスト合戦をするようになる。どっちが勝つかを本気で競い合って、時には相手が描く絵柄を予想し、それよりもよくなるように下準備して臨んでいた。
続く中学時代はサッカー部に所属しながら、細切れの時間を絵を描くことに没頭する。ある学年の夏休みにポスター制作の宿題が出されて、浮かんだイメージを一気に水彩絵の具で描いてみた。すると、先生に出来栄えの良さを褒められ、画材を変えたらもっとよくなるよと助言された。なるほど、こうすれいいのか。でも、それを実行すれば、自分の力とは言えないはず。しっくりとしなかったため、描き直すことはなかった。
私はこのエピソードを感心をした。ただ、美術の成績を上げたいのなら、指導どおりに制作すればいい。少しでも評価を高めたいのなら、敷かれたレールの上に乗ることが一番だ。しかし、どんな有益な言葉であっても、腑に落ちないことはやりたくない。コサカ君は早くから美術の本質に気が付いたのだろう。
ハッキリと理由はわからないものの、わずかな違和感にも妥協することなく、自分の流儀を貫いたのは素晴らしい。創作には近道はない。厳しい壁をの乗り越えようと努力するのみ、独創的な世界観にたどり着く見込みがある。自前で花を咲かせたい。一から育てることにこだわる姿勢に胸を打たれたのだった。