願わくば、我に七難八苦を与えたまへ

「男は敷居を跨げば七人の敵あり」とは江戸時代のことわざ。当時、男が社会で活動するときは、いつも多くの競争相手や敵がいて、いろいろと苦労があるという例え。今の世なら男ではなく、人にした方がいい。みんなそれなりに難儀なことを抱えている。それと意識していない苦労の種を含めれば、いつも身の回りには敵に囲まれているようなものである。

けれども、敵は味方よりも人を成長させる起爆剤になる。いくつもの試練に立ち向かうことで、さまざまなものが磨かれていく。しっかりした能力にするには、適当の不自由、不便、不満が必要不可欠。これらの厳しい敵がいるから、負けまいという闘志が湧いてくる。すぐれた好敵手は意思と努力を促進して、それがしばしば成功へ繋がるから実に面白い。

近年、佐々木範子さんは刺激的な人との出会いを求めている。仲良しこよしの味方を増やすより、好敵手として尊敬できる人と知り合い、創作意欲がメラメラ燃えるようにしていく。本物の美術家になるためには、火花を散らす間柄であっても、長い目で見れば、創造力を伸ばしてくれる味方になる。苦労人の佐々木さんはそんなメカニズムを本能で感じるのだろう。自分を向上させる敵のような存在がいなけれなならないことに気づいている。だから、その切磋琢磨でここに集まる面々をピカピカにしてくれるのだ。