失敗は成功の母

昨年6月、ギャラリーでイラストレーターコサカダイキ君の個展を開催する。これで3回目になるのだが、過去2回とは比べものにならないほど、作品全体の質感や立体感、陰影などの表現力が豊かになっていた。それは技術力がただ向上しただけではない。モチーフを観察する能力が磨かれて、独自性の高い構図として深みが増し、見ごたえのある作品ばかりだった

このボリュームによくやったと感心させられる。私はこの仕事を長くやってきたけど、ここまで短い年月で成長することができた作家には、そう簡単にお目にかかることはできない。だから、コサカ君の「しばらくは個展を休みたい」という申し出を快く受け入れる。これだけの作品が描ける以上、遠くない未来に表舞台で活躍する姿が目に浮かぶ。思わず、巣立ちしていくような喜びを感じた。

そして、この予感から半年も経たないうちに、現実になる日がやってくる。大手自動車メーカーにパンフレットのイラストを依頼され、続いて大手広告代理店からもオファーを頂戴する。さらに、やまぐち新進アーティスト大賞展で栄えある大賞を受賞と、正に飛ぶ鳥を落とす勢いになってきた。これもいろんなことがあってもイラストはやめなかったおかげ。言いかえれば、イラストレーター以外の道は上手くいかずに閉ざされたままだったから。つまり、「失敗は、ある意味では成功に向かう本道である」という格言の申し子なのだろう。