草莽崛起

NHK連続テレビ小説「らんまん」。印象に残った名台詞は、植物学者を目指す主人公 槙野万太郎が言った「名もなき草らぁはこの世にないき。人がその名を知らんだけじゃ」 。これはドラマの時代背景が明治であるため、自由で平等な社会でなく、名前で呼ばれない人たちがたくさんいた。だから、敬意を表する意味を込めて、名前を正しく知ることは大切なのだ。故に草花で見立てて発した言葉は、視聴者の心に響いたのだろう。
昨日、そんな台詞が頭の中をよぎる。山口情報芸術センターで行われた「山口市映画館の歴史リサーチ経過報告会」の時のこと。この企画は11月下旬に同施設開館20周年記念事業の一つで、かつて映画館があった山口市で映画によって育まれた文化を、美術家 志村信裕さんが地道な調査で集めた証言や資料などをもとに、丁寧に紡いで創られた映像作品。
 志村さんは取材を始めて1年超の期間に、130名以上とお会いして、30年以上前に映画館がなくなったこの街に、銀幕に光を当てて輝かせるように、数々の思い出話しや貴重な資料を引き出していった。やはり、皆々映画と山口市が大好きだから熱い思いを赤裸々に語ってくれた。つまり、この企画は多くの市民の力で創られようとしている。正にこれは幕末の草莽崛起。きっと志村さんは現代の晋作。山口市を面白い世の中にしてくれる。