非凡

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大自然を大型カメラでモノクローム撮影している」と言われたら、車である程度の場所まで行って、停車場所のすぐそばにカメラを設置し、そこから撮影していることとイメージするだろう。しかし、実際は数回にわけて重たいカメラ機材を背負い、道なき急斜面を歩いて準備しなくてはならない。しかも被写体である自然はこくこくと変化していくから、いつでもどこでも手軽に写せるほど単純なものではない。その時々の天候によって条件は大きく左右されるため、ベストショットになるタイミングを収めるには、長い年月にわたって経験を積み重ねる必要があるのだ。
下瀬信雄さんの「結界」シリーズ。約22年間、自然を追い求めて、2014年に写真集として出版された。誰でもできることをできないまで究め、平凡が非凡になるまで続けて制作された傑作。このことについて「機材を運びながらイメージを膨らませていく。限られた枚数しか写せないため、シャッターを切るまでアングルにこだわっていく。デジカメは何枚でも写せるか余計なものまで写しやすい。機械の性能の良さに甘えてしまう。その点、備品を含めて合計約20キロの機材を運ぶ大型カメラは失敗できない緊張感がある。だから面白んだ」と語られた言葉が印象に残る。ただ、在るがままに自然を見つめ、心に刻むように丁寧に写していった。もしかしたら日進月歩でカメラ性能が飛躍的に向上して、誰もが簡単に何かを写せることを予感し、このシリーズに挑戦したのではないのか?そんなことを想像させられる写真集だと思う。
■下瀬信雄展 2019年5月23日(木)~7月7日(日) 9:00-17:00(入館は閉館30分前まで) 休館 月曜日(ただし6月3日、7月1日は開館) 観覧料 一般1200円(1000円)、シニア70歳以上・学生1000円(800円)( )内は前売・20名以上の団体料金。18歳以下および高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在籍の方等は無料 山口県立美術館http://www.yma-web.jp/