伝える力

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一昨日の夜、NHK総合 プロフェッショナル 仕事の流儀には、俳句ブームの立て役者 夏井いつき先生が出演。俳句についてだけではなく、普段のことも歯切れのいい口調で、さすが豊かな表現力で語っていた。私はその中で俳句について語った、以下のシーンが印象に残った。

自分のために俳句を書くんだから、俳句のために自分の思いをゆがめるのは違うと思う。頭で空想で作ってると、かっこいい言葉を見つけたから、じゃあ、本当はこっちを表現したかったんだけど、でも、かっこいい言葉が見つかったから、いやいいやそっちでもとかって、最初の思いを捨てて、言葉のほうに酔ってしまう。心が無かったら、言葉探してもしょうがない。

つまり、俳句とは自分自身が楽しむために、心に浮かぶものを素直に表現する。だから、無理矢理に美辞麗句を並べたてても仕方がない。どこまでも自分の独自性を深堀していくこと。五感で感じている世界観にこだわり続けよう。ウケがいい言葉に惑わされてはいけない。耳ざわりのいい言葉は、受け売りだったりする。自分と向き合う気がないのなら、言葉遊びの俳句は楽しむことができない。そういう意味だと思っている。ちなみにこのことは美術家も同じだ。自分が感じたとおりに動く。ちゃんと自分の伝えたい意味で、自分の伝えたい熱量で、相手に伝えるセンスを磨くこと。心を熱くして魂を燃やすことが大切になるのだ。

ロックンロール

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「ロックンロールは入口がいっぱいあるんだよ。何かひっかかった瞬間、それがドアなんだよ。そっから入っていけるんだ。どっから入っても同じとこなんだ。中に入れば全員に会えるよ。すべてに会える。もし会えなかったらまだドアを見つけられてないんだよ。それかちゃんと入ってないんだ」というのは、ミュージシャンの甲本ヒロトの言葉だ。

彼と知り合ったのはおよそ24年前。こっちは33歳であっちは19歳。いわゆるゼネレーションギャップがあって、その頃にフランクに話したことはなかった。そんなある日、他愛もないことから共通の趣味がわかる。好きなロックバンドが同じだった。以来、年齢や立場などの壁がなくなって、いろんなことが言い合える仲になる。さまざまなものをロックンロールがぶち破ってくれたのだ。

その後、彼は地元に戻って教員になって、学校の仕事をはじめ、家族サービスから作品制作まで、いつもフル回転で動きながら頑張っている。それは楽じゃないけど、それを楽しんでいる。素晴らしい美術家に憧れて、いっぱい妄想と空想を繰り返し、やっぱり最善の努力をしていく。上手でなくてもいいじゃん。みんなが面白がってくれたらいい!クスノキで創られた「ももくり」シリーズに、そういうメッセージを感じる。今の自分がいいと思えることをやりたいようにやる。美術への熱い魂は時を超えても変わらぬまま、これからもふつふつと静かに燃やしていくだろう。

バランス

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世の中は好きなことだけやっていけるほど甘くはない。もし、それが本当にできるのならそれに越したことはない。しかし、実際のところ好きなことしかやらなかったら、そのすべてが上手くいかないから、好きなことの中に嫌いなことが生まれて、純粋に好きな気持ちが少しずつ褪せていく。

いわゆる生きるために好きでもないこともやるから、自由に好きなことを楽しむ時間が輝いてくる。夢中になって打ち込める好きなことと、やらなければいけないことは表裏一体の存在と言っていい。どちらもがあるからこそ、価値観が幅広くなって、豊かさが大きく増して、素晴らしい人生を創り出すはずだ。

つまり、好きなことをやる時の熱量と好きでもないことをやる時の熱量はまったく同じもの。好きなことに熱中するには、好きでもないことと向かい合うやる気が必要になる。だからこそ、好きではないことを一所懸命にやっていく。大手を振って好きなこと、やりたいことやるには、現実逃避しないで勉強することに取り組んでいく。すべての道はローマに通ずから、何ごとにも思う存分に頑張っていこう。

感謝

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8年前の12月5日より、ギャラリーでは臼杵万理実さんの人生初の個展と、その年のGWに行ったポストカードコンテストの上位入賞者によるグループ展を同時に開催する。この時に参加した5名の年齢は20代ばかり。さまざまなことでまだまだ未熟な面々による新しい試みだったが、上手くいくかどうかの不安よりも、ワクワクした期待感に満ちていた。思い起こすとこの時から若い人たちの作品展の数が年々増えていく。まさにここがターニングポイント。価値観が変化する社会にも後押しされて、自然のなりゆきとして広がっていった。

ただし、偶然ではない。それなりに轍を踏んできた。実績のある美術家に教えを乞う。ざっくばらんに体験談や助言などを語っていただく。特に吉村芳生さんには数えきれないくらいはっぱをかけてもらった。当時、飛ぶ鳥を落す勢いで、若者たちにとって憧れの存在だったから、ひと言だけ声をかけられても、身震いして喜ぶ姿を頻繁に目撃する。ワラをもすがる思いの若者に勇気を与え続けた。

2013年12月6日の早朝、そんな大恩人の訃報に接する。あまりにも突然のことで言葉を失った。唯一無二の人だけに落胆は半端じゃない。それでもやらなきゃいけないことがある。目をかけてもらった臼杵さんたちの作品展をやらねばならない。みんなで手を合わせて恩送りすることに決心したのだった。本当にこれでよかったのかどうかはわからない。だけど、美術への熱い魂を吹き込まれた若者はその後姿を追っかけて努力し続けている。どうかこれからも見守ってください。合掌

美術談義

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「変えようと思っても、変わらないのは事実なんだ。だけど、挑むということで、ぼく自身が生きがいをつらぬいている」というのは岡本太郎の言葉だ。当時、日本美術界の旧態依然とした体質ままで、そのことについては認めつつも、かと言って決して負けてはいけないという、むき出しの反骨精神を感じさせてくれる。立ち向かった結果がどうなろうとも、常に激しく意欲的に挑戦することこそが、自分らしく生きること証だと言いたいのだと思う。

ところで、この2日間、開幕したばかりの県美展について、来店された方たちとあれこれと談義する。どうしたらもっと面白くなるのかや現行の運営方法でいいのかなど、それぞれの持論を自由に語り合うながら、理想のスタイルを模索しながら勝手に盛り上がっている。際のところ、答えがないのも答えのひとつなんて言うけど、実ハッキリとした答えは求めようがないので、誰の意見も有意義であって納得させられることが多い。やはり一番大切なのは、最善について問い続けること。理想の県美展について知恵を出し合えば、それ自体に存在意義があるものになるはずだ。

つまり、県美展という県民にとって最高の美術祭典の時に、当然なすべき美術談義をなさないで漠然と過ごしてはいけない。せっかくのこの機会に小さなこともでいいから自分の思っていることを語って楽しむのだ。しっかりした内容にならなくてもいい。価値あるものにならなくてもいい。ただただ感じていること言葉にしていく。それによってのみ発見できることがあって、これから取り組むことが少しでもわかれば、美術への愛情が深まっていくだろう。

やってやる!

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「この瞬間、瞬間に、若さとか、年よりとか、力があるないとか、才能とか、金とか、あらゆる条件を超えて、その持てるぎりぎりいっぱいの容量で挑み、生きるということだ」という岡本太郎の名言がある。

創作はやればやるほど、いろんなことの経験値が上がっていく。自分らしいイメージが増えてくれば、もっと深く不思議なものが感じられるようになる。自分独自の感覚が何かつかめれば、ますます美術へのめり込んでいくだろう。

だから上手くいかないかもなんて心配はしない。すべてのことを楽しむ心と少しの勇気を持っていればいい。どこまでも知的好奇心を掻き立てて、思い切って手を出して挑戦していく。何とかしてやろうという熱量が個性的な作品を創り上げる。真っ向から好きなことに取り組めば、いい結果に向かっていくはずだ。

先人に学ぶ

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「(美術のために上京したことについて)若い頃は東京へのあこがれが誰にもある。だが、仕事(= 創作)ができる環境であることが大事。山口での豊かな生活、人とのつながり。その中で心の深まりが生まれ、仕事に突っ込んでいくことができる。常に模索し続け、今年は特に新しい方向が開けるのでは、と強く思っている」というのは、14年前の10月に県立美術館で開催された『田中米吉 ― ”ドッキング”からの視線」で朝日新聞山口版の特集記事に掲載された言葉である。
本日からギャラリーで始まる「県美界隈展 Today is a gift 今という瞬間は贈り物」。山口県にゆかりのある美術家35名と、今年の1月に天国に旅立った田中米吉先生のご家族にお願いをして、小作品をご厚意で特別出展していただいた。
私が米吉先生にこだわったのは、本格的なスタートが40歳過ぎだったことが第一の理由。また、山口の美術家たちと積極的に関わり、切磋琢磨しながら腕を上げていって、95歳まで全身全霊で取り組んだ創作人生を吹聴して、山口でも創作できる道があることを知ってもらう機会にしようと考えたからだ。この機会に稽古をつけてもらうことが一番の目的で、さらに熱いハートの面々が集うことで、予想もしない化学反応が起きることに期待するのみ。どうか皆様もご一緒に美術に燃える師走にしましょう!