帰郷

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子供の頃、おもちゃの聴診器で自分の心臓の音を確かめたことがある。それはトーントンと打つ音を聴きたかっただけ。医学や科学などの見地に立った立派な行動ではない。まったくの思い付きで無邪気な行動だった。昨日、そんな記憶が甦った。中原中也記念館で飾られていたある作品を観た瞬間だ。作者の白川美幸さんはニューヨークで映像芸術を学ばれ、先端的なメカを使いながら心というカタチないものにこだわって創作活動している。このたびの作品は中也の詩「帰郷」をモチーフに創作。アクリルケースに入った植物(玉竜)に付けられた生体電位シグナル。中では福田百合子名誉館長などが朗読した「帰郷」の詩の声が小さなスピーカーより響き渡り、その言葉によって植物中に生起する微弱な電流が発生して、外部に2本ある竹の釣竿の1本を動かしていく。もう1本は記念館前に湯田温泉の街の息吹に同じように反応させる。私たちは気が付かない音の中に生きている。わずかなノイズによって影響されて生きているのだ。白川さんの作品には傷つきやすい童心を持ち続けることで生まれる喜びを感じられた。つまり大人になって常識に縛られるようになったら、身の回りには多くの謎と不思議に鈍感になるのだろう。そんなメッセージを感じた。現代アートはわかりにくいようで、実はとてもシンプルだったりする。ぜひこの感覚を会場でお楽しみください!

■企画展Ⅱ(後期) 山口盆地考2018.....吹き来る風が..... 2018年1月24日(水)~4月15日(日) 9:00~17:00(入館は閉館30分前) 休館 月曜日(祝祭日の場合は翌日、毎月最終火曜日、年末年始 12月29日~1月3日) 観覧料 一般320円(270円)、大学生210円(162円)、18歳以下、70歳以上は無料 ※( )内は20人以上団体料金 中原中也記念館 山口市湯田温泉1-11-21 http://www.chuyakan.jp/