芳生伝

このたび開催した故・吉村芳生さんの作品展では、ご親族や友人などの生前にお付き合いのあった方々と在りし日のお姿を偲びつつ、他愛もない思い出話をしているようで、実際はたくさんの視点から振り返ることができた。そうするといくつもの出来事が一本の線で繋がっていて、何があっても絵を描き続けていく人生をだったと言えるだろう。

それはつまり、例えいろんなエピソードを聞いたところで、ご本人がいないからすべてを知ることはできない。真ん中にぽっかりと穴が開いた欠けたパズルのピースを埋めるように、小さな破片を少しずつ繋ぎ合わせて輪郭線を作っていけばいい。よくわからないことは想像力を使って、ざっくりとしたイメージを浮かべながら仮説を立てていく。

とにかく本質を見失ってはいけない。複雑なパズルを解くようにじっくりと取り組んでいくだけ。あまりにも簡単に結論付けてしまうと、濃密な創作人生を駆け抜けていった、吉村さんの波乱万丈の人生を理解することはできない。まるで推理小説の謎を解くように、これからもことあるごとに情報収集をして、私なりに芳生伝を創ってみたい。