龍虎図屏風

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県美で始まった「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」。会場へ入ってすぐに展示してあった山田道安の水墨画「龍虎図屏風」は、龍虎が自然の理の象徴とする禅の思想『龍吟ずれば雲起こり、虎うそぶけば風生ず』に刺激され、波しぶきの上に舞うように出現した龍と、風の吹き荒れる山林に身を構えた虎の様子を対比するように描かれてあった。

私はこの作品を観た瞬間に、モノクロの時代劇映画のワンシーンが頭に浮かんできた。いや違う。これはきっと、NHK連続テレビ小説 カムカムエヴリバディの「妖術七変化!隠れ里の決闘」の方だ(笑)。あれだけ何度も繰り返して対決シーンを見れば、サブリミナル効果が生まれて、いつの間にか目に焼き付いてしまったのだろう。

それはさておいて、配色の濃淡コントラストは4つのパターンでしか構成された作品なのに、画面からは鋭いインパクトが伝わってきて、実際に生きているようなリアリティーを感じさせられる。いわゆる美術は見えないものを見えるように感じる力で楽しむ世界。さまざまなものを五感すべてを使い、足らない部分を想像力で補って、自分なりに新たな豊かさにしていく。このバリエーションが少ない作品を、単なる龍と虎という情報だけではなく、どんなふうに世界観を理解し、どんなふうに実感するのが大切になるのだと思う。