いわゆる美術家が独自の作風を求めて生きるのは、現状のアートに対する不満からくる渇望の表れ。言い換えれば、独自の作風を求めない美術家とは、現状の才能に満足していることを意味する。もう既に自分の才能は美術の世界で通用するレベルであり、それ故に十分やっていけると思い込み、その範囲内だけで作品制作していこうとする。
だから、独自性あるものを求めてこそ、美術家と発展していけるのだ。そういう意識を持たない限り、今日も明日も何も変わることはない。どうすれば自分の才能を活かせるのかという危機感を持つこと。例えかなりのレベルに達していたとしても、もうこれで大丈夫だと考えているようなら、常に変化する世の中についていけなくなるだろう。
かつて、そんなことを吉村芳生さんは意識していたかどうかはわからないが、半端ではないハングリー精神で創作活動に取り組んでいた。こつこつと芸術と呼ばれるものを生み出そうとして、来る日も来る日も創意工夫と試行錯誤を重ねて、ようやく努力が実って辿り着いた超絶技巧の世界。最高のパフォーマンスで描くことにいつも徹していた。