海辺の散歩

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海辺に暮らしていると、都会にいる時よりも一層頻繁に
1人の人間が生き続けるためにどれだけ多くのいのちを
頂戴しているというこを実感せざるをえない。
友人たちが時々海の幸を差し入れてくれる。
釣りたてのアジ、サバ、タイ、イカトコブシ、サザエ、ウニ・・・。
魚の中には指を触れるとピクピク動くものもいる。
その頭を包丁で切り、さしみにする。
くねるタコを熱湯に放り込み、もがいた末に赤くなるのを待つ。
サザエは大きめの石を落として殻を割り、
うごめく身を取り出してこれもさしみに。
ウニなどは先を斜めに尖らせた竹棒を2本を殻に差し込み、
ぐいと力を入れ左右に割って卵巣をとる。
そういう作業に不慣れな私は、
まれにいくらか気分が悪くなったり、
背びれの先が指先に突き刺さりあまりの痛さに
貧血をおこしたりすることもあるが、
たいていはおいしく頂き、
「ごちそうさま。ありがとうございました。」
と、幸せな気分になる。

都会のスーパーで切り身やさしみを買って口にする時には、
自らの手で生身のいのちをさばく儀式がぬけてしまう。
その分、自分を生かしてくれている
他のいのちへの思いも薄れてしまうかもしれない。

                大西 靖子


天草在住の版画家・大西靖子さんのエッセイと版画で、
自然の中にある自分を教えてくださるような気がします。