遙かなる甲子園

イメージ 1

昨年の夏、運よく休みの日に母校の野球部の試合があったのでひさしぶりに応援に行った。ちなみに対戦相手はサッカー部の県内最大のライバル西京高戦で、そのせいなのかサッカー部も応援に来ている。今でこそサッカー部が看板になった母校だが自分が在学中は野球部の方が優遇されていた。甲子園の緑の蔦が何度も見えそうなところまで勝ちながらもあと一歩で力尽き、卒業後にようやく1度だけ選抜高校野球に出場できたがそれは約20年前の話になってしまった。
「今年こそ夏の甲子園」とみんなが願う中で始まった試合はベスト8の第4試合のため「夕陽の決闘」となり、涼しくなったのはよかったのだがエラーなどで流れを悪くして8回表の西京の攻撃が終わったところで2-4と劣勢が続く。ようやくその裏の多々良はツーアウト満塁のチャンスをつくるが、ここで2年生の1番O君は絶好球を打ち上げて万事休すとなった。
同点のチャンスを逃して敗色が濃厚の展開にスタンドは静まりかえった。が、この時にどこからかO君へ熱い声援が響きだす。それはサッカー部の連中だった。同じ釜の飯を食う者同士の熱い気持ちが美しい。意気消沈したスタンドが再び元気になる。嗚呼、なんだか青春ドラマを見ているような清々しい場面に心を打たれた。9回表、よし、ここからだと期待したが、またまたエラーが出て西京高にダメ押しとも言える2点を挙げられ2-6となって、いよいよ窮地に陥ったが勝利の女神は気まぐれだった。
最後の攻撃の9回裏、先頭バッターからヒットが続き、ポテンヒットなどあれよあれよといううちに同点になって、さらにワンアウト満塁のサヨナラのチャンス。ここで再び登場したのは1番バッターのO君。「決めてくれ」と、多々良スタンドからの熱い思いが彼のバットに乗り移たのか、今度は鮮やかなセンターオーバーのサヨナラヒット。大声が鳴り響くスタンドは興奮の坩堝となり、喜びのあまり誰しも構わず握手やハイタッチなど、なんとも言えないドラマチックな幕切れに酔いしれた。
これで波に乗ると思えた母校だったが次の準決勝であえなく敗退。またしても遙かなる甲子園になってしまった。