It's a Small World

太宰治の名言に「芸術家は、もともと弱い者の味方だったはずなんだ。弱者の友なんだ。芸術家にとって、これが出発で、また最高の目的なんだ。こんな単純なこと、僕は忘れていた。僕だけじゃない。みんなが、忘れているんだ」がある。

ただいま個展開催中の岸透子さんが描くモチーフは、自宅のお庭に咲く花や遊びにくる野良猫など、どこでも見かける身近なものばかり。そういう平凡だと思われるものにものに、あたたかく眼差しで包み込むように触れていく。今そこで起こっていることを楽しみながら受け入れている。小さな世界は本当に小さいけれど、小さなことに心を配れる感覚は、大きなハートがなければできないだろう。

つまり、その日その時に出会ったものを大事に、一つ一つ自分なりに描き込んでいく。その活動はいたって単調で、パッとしない地味なものだけど、いつの間にか何かをつかむことができる。自分が楽しいと思うことなら、好奇心がどんどん掻き立てられて、豊かな創造力を育んでいけるはず。当たり前だと思えること、平凡なことが非凡だと感じるのは、岸さんの表面的なことにこだわらず、真理そのものを追究する情熱があるからだ。