木を植えた男

平成時代が始まった頃、人生の先輩に誘われて、短編アニメーション「木を植えた男」の上映会へ参加した。当時ネット環境なんて影も形もなくて、映画雑誌も読んでいないため、予備知識はまるでなかったけど、観終わってみれば、よく知らなかったからこそ、すべてが新鮮に感じられて、ものすごい集中力を発揮して堪能することができた。

ちなみにこの映画は南仏の山岳地帯の荒れ果てた大地に、たった一人で黙々と木を植え続ける男を描いた物語。男は鉄製の杖を使い地面に小さな穴を掘り、そこにドングリの実を埋める作業を淡々とやり続けて、豊かにそして活気づく町へと変貌させていった。

私は若かったこともあって、めちゃくちゃ感動してしまう。その理由はギャラリーの仕事も同じようにひたすら種を植えるしかない。ここに合う文化の森を創ってやるぞと、夢を持って意気込んでいた。私は胸が熱くなった勢いで、この思いを集まった人たちへ打ち明ける。一同大爆笑!若造に何ができると一蹴された。これはこれでいいのだ。おかげで我武者羅になっていけた。今もそのままだから笑ってもらって本当に良かった。