そりゃあ身近なものが一番。私は親しいものしか描かんから。
うちには野良猫がきますが、面白いから描いてやろうと思うけど、
なかなか描けません。それだけの下準備がまだできてない。
犬のハチは、二カ月のときからうちへきて、十五、十六の
付き合いがありますからね。
何枚も描いて・・・・・・。
まあ、描かないというよりも、描けないんでしょうね。
私はそれほど空想力豊かな、劇的な才能はない。
奇想天外な思いつきというものはないですよ。
松田正平
画家の松田正平氏が好んだ言葉に「犬馬難鬼魅易(ｹﾝﾊﾞﾑﾂｶｼ ｷﾐﾔｽｼ)」が
あります。｢鬼や魑魅魍魎などの奇異なものを描くのは簡単だけれど､犬や
馬などの平凡なものを描くのは難しい｣という意味。当たり前のものを当たり前に
描くことは難しさ､そして､平凡なことに繰り返し感動できることのすばらしさを
語ったものです。やはり日常の中にある平凡さは奥深いものですね。
