先日、長い歴史を乗り越えて愛着によって残された、継ぎはぎだらけの古布が飾られた展覧会を鑑賞する。会場内には温かさや懐かしさの空気が漂い、また、年月と共にやさしく変化する藍染の古布が可憐だった。おそらく旧家や良家にあったと思われるものばかり。その家に勤めていた女中たちが創意工夫をして、布と布を縫い合わせて蘇生させてくれたのだろう。主のためにこうしてああしてと深く考え、真剣に取り組んだからこそ、きれいに仕上げることができた。アカデミックな美術教育より代々続いている家風が浸透している賜物だ。人の持つ感性は思い続け、考え抜いていると、ひらめきが生まれて、美しい世界に辿りつける。上手くできるまで何度もやり直し、とうとう最後には一番適当なデザインになったのだ。これは現代でも通じること。人を喜ばせたい気持ちが家族を明るくして絆を強くする。「襤褸 ぼろ 語りつぐ藍と愛」展。文化とはなぜ必要なのかがよくわかる素晴らしい展覧会だった。