頑張らない職業

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そう言えば、世の中の右も左もわからない若かった頃、都会で長く画廊に勤めるベテランの方から「美術家は普通の人と生き方が違って、頑張らなくてもいい職業なんだよ」と教えてもらったことがある。なぜなら美術は一般社会のように生産性のある世界ではない。だから必死に頑張っても努力が報われないことが多い。たしかに技術力は良くなるけれど、作品が比例して面白くなることは限らない。のんびり、ゆったり、自分らしいペースで楽しみながらやるもの。変に抜きん出ようとして、あくせく、いけいけ、がつがつにしても、簡単には個性が成熟しないから空回りになるのだ。
また、美術家は普通の人と同じように生きようとしたら、必然的に作品を次々に売らなくてはいけなくなる。安定した収入を得るために「今月はこのくらい作品を売るぞ」と計算をして、いつの間にか売るために流行の美術を追いかけたりして、どこにでもあるような平凡な作品に陥ってしまう。それよりも自分にしかできないことに価値観を見い出す。人と違う自分の持ち味を活かしていく。つまり自分自身の信念に基づいて生きれること。例え変人と呼ばれても気にしない。普通でない道を歩むのだから、一般の人から見れば、遊んでいると思われてもいい。何を言われてもぶれることなく、創作を続けなれるハートを持とう。無理して普通に生きるよりも諦めるというのか、これしかできない自分だ、と悟っていくことが大事なのだ。
当時、この言葉の意味は理解できなかった。しかし、この年齢になったからしみじみとわかってきた。美術家は自分しかできない人生を歩むもの。その人がその人であるためにその人が決めたペースで生きていく。思い切り開き直った方が豊かな気持ちで楽しめる。そのままのありのままで、すべてを受け入れながら自分らしくぼちぼちと生きていこう!