小自然に育つ

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その彼はのんびりとした空気が漂う農村地域に家があった。小さくてかわいい大海山。近くの瀬戸内海は、ほとんどの日が穏やかな日和ばかり。やさしい波音がゆるく聴こえてくる。そして、暮らしやすい温暖な気候にもめぐまれて、緑豊かなフラットな大地が広がっている。そこはまるで絵本の中にいるようだ。時間の観念というものが感じられない。何月何日何時何分という正確さは必要ないのだ。「晴れた日のお昼ごはんを食べてから…」なんて、時計のない時代にタイムスリップしたくらい、アバウトなふわふわした時間が流れている。天国に近いような文化があるのかもしれない。

そんなユートピアと呼ぶにふさわしい場所で育った。私は縁あってたまたま小学生の頃から知っている。だから付き合いをふと数えたら30年も経っていた。嗚呼、知らぬ間に年月を重ねてしまった。恐ろしい(笑)。それはさておき、ある時期から父親と同じ世界に飛び込む。最初から目指した訳ではなかったが、羨むようなめぐまれた環境にいたら、自然とそうなったのだろう。ただし、要領はよくない。それは手先ではなく、生き方が不器用なのだ。人一倍以上の時間をかけて長々と創作している。大自然ではなく小自然の中で伸びた感性を羅針盤に、一歩一歩少しずつのろのろと制作する。だから普通の人なら目に入らない美を発見できるのだろう。なんとも豊潤な作品に癒されれ\る。やはりマイペースが一番。これからも不思議な世界にエスコートしてください!

■保手濱 拓 時をなぞろ 2019年8月21日(水)~9月1日(日) 9:00-18:00(最終日は17:00まで) 休館 8月26日(月) C・S赤れんが 山口市中河原5-12