発見

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これは素晴らしいと感じることに出会ったら、これまで積み上げたことをあっさりとやめて、ただちに次の可能性を信じて新しい分野に挑戦していく。流行に敏感・・・っていうよりも、ただ単純に画家としての世界を極めたかっただけ。その美術に取り組む姿勢は感心するほどストイックで、いつも変化していくことが画家の証明だと信じていたはずだ。先週、県美で岸田劉生展の作品を鑑賞している内に、今のような感想は頭に浮かんできた。約100年も前にこれほどの豊潤な感性を持ち、時代を超えた洒落た価値観があるからこそ、日常をラフに描いた水彩素描に添えられた言葉は、まるでSNSのように私的な出来事の一場面を美しく切り取っていた。

そんな岸田劉生が24歳の時に「自分は自分以外の誰の要求によって生きられない。自分は自分の孤独な本能を感じて居るから、自我の要求を外事にして自分は生きる心算はない。自分は人類の要求でも自然の要求でも、自我の要求を容れて動かされはしない。自分は自己に要求のない事を強いられるのは耐らない」という言葉が図録の中に書かれていた。なるほど、いつの時代も若い時は唯我独尊というのか、自分の考え方を尊重して傲慢であり、かつ、純粋で真っ直ぐに生きられるエネルギーがある。おそらく決められた通りに進むことに疑問を感じ、自分にしか歩めない道を求めていた。つまり物語がありふれた世の中で、偶然から生まれてくるものに新鮮さを期待したのだろう。これが私の第1ラウンドを観た時の感想。続くラウンドはどうなるのかがわからないけど、自分なりの素敵な発見を楽しもうと思っている。

■没後90年記念 岸田劉生展 2019年11月2日(土)~12月22日(日) 9:00-17:00(入館は閉館30分前まで) 休館 月曜日(ただし12月2日は開館)) 山口県立美術館 http://www.yma-web.jp/