きれいな水

昨日のNHK朝ドラ『虎に翼』の番組終盤に、主人公の寅子と裁判官の男との「法律とは何なのか」についてのやり取りが素敵だった。寅子の「私たちはきれいなお水に変な色を混ぜられたり。汚されたりしないように守らなきゃいけない、きれいなお水を正しい場所に導かなきゃいけない」という言葉に、寝惚け眼が一気に覚めていった。

なぜなら、美術家を目指す若者のことを「きれいなお水」という比喩で例えるとピッタリだと感じたから。誰も若い時は海のものとも山のものともつかない。自分自身の限界なんて、微塵もわかっていない。だのに、才能を伸ばすことができないのは、世の常識や固定観念、先入観によって、奇想天外な発想や感覚が先細りしていく。

要するにちょっとずつ創作活動の経験が増えてくると、いつの間にか作品制作で失敗することを恐れて、斬新な個性のない無難なものへと流されていく。コケたとしても基本的に若くて大したことをしないことを忘れてやすい。だから「きれいなお水」を守るためにエールを送るのみ。一所懸命やっていたら、なんとかなるさと背中を押すだけだ。