パッション

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高校生の頃、母がギャラリーを営んでいたため、老若男女を問わず、様々な美術家とお話しすることができた。私は美術についてまったくの無頓着で、ほとんど何も知らないレベル。どんな美術なのかは理解できなかったけど、無知な若造にも遠慮なしに語ってくれて楽しかった。それはまだまだ世の中は今のように多様化していなかった。堅苦しい仕来りが色濃くあって、生真面目で面白味に欠けることが普通だった。だから型破りな発想や感覚を持つ人たちがカッコよく見えた。馬鹿みたいに頑固で融通の利かない石頭の人たちに、物事は本質を失わなければ自由な視点でいいじゃないかと、やや挑発するような作品で融解しようとしていく。新しい文化を自らの手で創り出していこうと意欲に溢れていた。よくも悪くも向こう見ずな人が先頭に立って活気をつくっていた。やはり情報は多いよりも少ない方がイマジネーションを活性化させる。純粋に知っていくことに楽しみがあった。すぐに答えを出さなくてもいい、のんびりと答えを考えられる時代だった。

そんな昭和の晩年、山口県立美術館は開館し、そして、戦後まもなく在野の美術家たちによって誕生した県美術展覧会も、新しくここからスタートした。当時、美術家が3人集まったら県美展の話しになるというのは大袈裟ではなく、それくらい県内の美術家たちにとって、意識せずにいられない存在だった。山口県の美術文化を盛んにしたい!。この理念のもとにさまざまな英知を結集させて、より素晴らしい美術に思いをはせていた。「作品主義という原点に立ちかえり、厳選主義をつらぬき、作家にとって競い合う県美展へと、脱皮するため県内審査員にとらわれず、今日的な視野から純度の高い審査を期待できる人物を選ぶ」(美術館ニュースより抜粋)という理念が美術家たちのハートを熱く燃やしていったからだろう。

あれから約40年。いよいよ今日から今年度の県美展の応募作品の受付が始まる。とにかく楽しみだ!また、みんなで熱い時間を謳歌しましょう!