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このたびの岸透子さんの個展に「終わりの次」という作品があった。ついタイトルにつられて、作品のメッセージを読んでみると、思わずポンと膝を叩いしてしまうほど、気持ちよく腑に落ちる言葉で書きつづられていた。ちなみに以下のとおりである。

「庭に咲いた牡丹です。大きな、まさに牡丹色の花がとても豪華でした。花開いてからほんの数日の後、雨に打たれて花弁は散ってしまいましたが、その後に見えるようになった種も、また鮮やかな色と面白い形で、花に負けず劣らず存在感がありました。むしろこれが次の主役ではないかというくらい。雨上がりの、散ってもまた色の綺麗な花弁と、葉の上に球状に溜まった水滴とともに、描きたくなりました」。

この世の中に存在するものはすべて諸行無常。きれいに咲いた花も散ってしまう日がやってくる。だからといってなにも悲しむことはない。その花を見た人たちの心に印象が刻まれ、生きるための遺伝子を刺激してくれたのだ。自然現象というものは素敵なティーチャーになることもある。どこにでもあるような、ありきたりなものを使って、人生というものの真理を学ばせてくる。だから種というものは具体的な形をしたものだけではない。心の中に必要な無色透明で空気のような種もあることを知ろう。そして、この2つの種が重なり合うことによって、生命を愛おしむ気持ちが育まれていって、人として大切な情操が豊かになるのだ。身のまわりの小さな発見を楽しみ、そこから大きな宇宙へ繋げて、不思議な力を堪能しましょう!