芸術論覚え書

中原中也の『芸術論覚え書』の中に、「人がもし無限に面白かったら笑う暇はない。面白さが、ひとまず限界に達するので人は笑うのだ」という言葉がある。
いわゆる世間一般で年の瀬が近づくと、この1年は早かったという声が聞こえてくる。「あっという間の1年でした」と、まるで他人事のように、自らが営んだ年月を端的にまとめてようとする。こういう言葉で語る人たちは概ね平和に過ごしている場合が多い。もちろん、それはそれで良いに決まっている。ことわざの「無事是名馬」ように、能力が多少劣っていても、病気やケガもなく、無事に走り続ける馬は名馬だからだ。
ちなみに私にとってこの1年を総括すれば、やはり山あり谷ありだろう。なぜなら、いまだにコロナ感染症は終息しないし、少子高齢化が進んで経済は低飯するばかり。さらに戦争や地球温暖化に加えて、諸々の事情が蔓延るあることがあって、生き馬の目を抜く日々を生きているからだ。そんな中、6月に広島でイラストレーターりおた君の個展を皮切り、目をかけていた面々が次々にブレイクする。おかげで喜んでいる暇がなかった。ずっと、ハングリー精神を保てたのは、安堵に浸れなかったからだ。