猛烈な天

詩人 草野新平の作品『猛烈な天』の冒頭に「血染めの天の。はげしい放射にやられながら。飛び上がるように自分はここまで歩いてきました。帰るまえにもう一度この猛烈な天を見ておきます」と書かれてある。
この言葉は中也記念館の展覧会図録の解説によると、心平にとっての「天」とは時空の渾然とした場であり、人類全部にとって天ほど普遍の場はない。刻々と変るその永遠(私の詩作について抜粋)。要するに「天」は宇宙へ通じる遥かなものであり、時間や個人の意識を超えた、無限の広がりをもつ壮大な世界として描いていたとのことだった。
ところで、今夏は日本列島のどこでもが『猛烈な天』になった。「血染めの天の。はげしい放射・・・」なんてピッタリとくる。ただし、飛び上がって歩けるほどの余裕はない。実はこの詩が誕生したのは1940年。現代とは最高気温の差があり過ぎる。少なくとも10度は違うし、もしかしたら今の最低気温が当時の最高気温かもしれない。なんて本道からそれてしまったけど、その時々の社会状況や環境などを想像しながら、作品を味わうことが鑑賞の王道だ。自分なりにひも解くことが楽しむことの第一歩である。