天命

幼い頃からスタジオジブリの作品に憧れて、いつもワクワクしながら見ていた。何度繰り返して見ても面白くてたまらない。そのうち映画カタログに載っていない場面を、自分の力で描いてみようと思いつく。上手くなってそっくりだと言われたい。そんな小さな一歩は二歩三歩と続いていく。少年は最初から絵の魅力に取りつかれていった。

だけど、プロになろうなんて考えなかった。正確に言えば興味がなかった。普通に働いて好きなことを楽しめばいいと割り切っていた。ところが高卒後に働き出して、しばらくした時に立ち止まる。本当にこれでいいのかと自問自答する。そこで行きつけの美容室の主に相談したところ、野心に満ちて勢いがあるイラストレーターを紹介された。

当時、雲の上の存在。しかし、出会ってすぐに打ち解けて、夢を語り合って目が覚めた。ジッとしていられない。そうやって始まったイラストレーターへの挑戦。コロナ渦があって厳しい船出。けれども嘆かずに最善を尽くす。くよくよしてる暇はない。苦労人は言い訳しない。そして、乗り越えたからこそ今がある。長く信じたことが実って本当に良かった。