エンパシー

ギリシャ語に由来するエンパシー(Empathy)という言葉がある。これは、自分とは異なる価値観や考え方を持つ他人に自己を投影し、相手が何を考えているのか、どう感じているのかを想像する力のこと。また、『共感』『感情移入』『自己移入』と訳され、自己の感情を表現することから、美術や哲学、心理学の世界などで用いられている。

そんな言葉が似合うのは、山口情報芸術センターで開催中の山口市の映画館歴史を市民の記憶や残された記録などで制作した映像作品と資料による企画展「Afternote 山口市 映画館の歴史」。その昔、市内に映画館があったことを知る人たちの証言を核とする映像作品からは、当時の映画に様々なエンパシーを感じて明るく楽しそうに語っていた。

いわゆる過去を懐かしむことや、懐かしいという感情を抱くノスタルジーではない。さっき見てきたばかりくらい、破顔一笑でワクワクしながら語る姿は、映画の物語や登場人物を身近なものだと感じて、自分と重ね合わせて引き込まれた体験が生み出す。映画によって人生のドラマを感じやすくなり、人生の主人公は自分だと自覚できたからだ。やはり映画はたくさんの感情を芽生えさせる。