鳩と青年

先週、県立美術館の展覧会を鑑賞した後に家路へ向かっていると、一羽の鳩が飛び降りて来て、目の前を元気よく歩き出したので、私はしばし立ち止まって、鳩の動きをジッと見ていた。なんとものどかな景色である。穏やかな気持ちにさせられる。あー、そういうことか!次回展覧会が香月泰男先生のシベリアシリーズと教えに来てくれたんだ。

なぜなら、1954年に香月先生は戦争反対の意思表示として、十字架の上のキリストと満州国で目にした全裸の屍骸(しがい)をモチーフにした「青年像と鳩」を描いたことがきっかけになってシベリアシリーズが始まった。その時に以下のようなことを述べる。

「この作品で私が意図したものは戦争への憎悪による平和への願望を強く訴えることです。戦争による膨大な犠牲の代償として平和への願望があったはずなのに、日本人は今それを忘却しようとしている」。当時、敗戦から9年が経って経済復興を果たして、戦争の記憶が薄らぐ社会に危機感を持ち、恒久的な平和を願って熱い魂を燃やして制作した。鳩くんありがとう!おかげで大切なことを思い出せたから感謝するしかない。