帰郷

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その作品を観た瞬間、中原中也の詩「帰郷」が脳裏に浮かぶ。これは少し前にこの詩をテーマにした企画展を観たためなのか?いや違う。それよりも中也と同じような空気を感じてしまった。真面目で、不器用で、意地っ張り。それ故に生きていると辛いことと多く出会う。けれども純粋だから前を向いて歩き続ける。決して悟ったわけでもなく、観念して諦めたわけでもない。微妙な心模様はどんよりと曇ったまま。作品は悩み、苦しみ、もがくをエネルギーにしている。そんな彼女の絵の中から雲は晴らすような風が吹いていた。30代になった年齢にふさわしい大人の風だ。「嗚呼、おまえはなにをして来たのだと・・・ 吹き来る風が私に云う」という、中也の言葉が作品から伝わってきた。これまでの自分を乗り越えたものは成長する。逃げ遅れたようで、逃げなかったものに、神様はご褒美をくれるのだろう。

■ギャラリーナカノ40周年記念 四〇よいまる展 日時 2018年3月16月~4月1日(日) 11:00-19:00 水曜定休日(3月21日、28日) 出展者 臼杵万理実 亀井勤 亀井千尋 佐藤文恵 柴田瑛代 佐々木範子 冨永嘉子 中野寿子 広川隆 村上真実 吉田朱里