一念岩をも通す

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どんな人も子供の頃は何かに憧れ、未来の姿を想像していくもの。そこには正解不正解なんてない。子供にとって重要なのは大きな夢を描くこと。こんなことがやってみたい。馬鹿にされてもいい。あり得ないことを堂々と言う方が頼もしいのだ。もちろん、心配しなくても中2病と呼ばれる世代になったら、世間の冷たい風に触れて目が覚めてくる。社会の中で生きるための適性を求めていく。それはそれでいい。働きながら持てる夢を育むことで人生は有意義になる。きちんとした未来を自分で創っていこう。現実逃避していたら、夢ばかりに酔ってしまう。人生を千鳥足で歩くだけ。自分で考え、自分で行動すること。この基本ができなければ、ただただ流されるだろう。

ところで、岸透子さんの子供の頃の憧れはNASA(米国航空宇宙局)で働くこと。それは元NASAの職員が関わったテレビ番組を見て、「私の未来はこれだ!」とひらめいた。天文学や宇宙の生態に知ることで、多くの人と関わっていけると考えた。正直、子供とは思えぬ早熟な発想だ。しかし、高校生になってから、この理想に違和感を覚える。「私は生きている人の本質を知りたい。宇宙より地球にいる人を知りたい。そこで発生する現象を感覚的に表現したい。そうだ、美大へ行って美術家になろう」と、この熱い志を両親に語ったものの速攻で却下される。

だけど、彼女は挫けなかった。だったらと美術史と英語が学べる大学へ進む。将来への可能性を選択する。夢の実現に備えた。大学卒業後、広告代理店へ就職。本の装丁などのデザインをする。憧れに近い職業でやりがいがあった。しかし、過酷な仕事の前に身体を壊し、帰山して静養することなった。大きな挫折を味わう。そんな中で初心を思い出す。「そうだ、美術家になろう!」。今から14年前、そんな彼女と私は出会った。当時、まだまだよくわからなかったけど、月日を重ねていく内に美術への愛情の濃さに気が付く。美術家の実力の差は学ぶか学ばないか。こつこつと努力する人。だから作品に魅力を感じる。