自分磨き

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美術家の永遠のテーマと言えば、自分らしい個性的な創作ができることだろう。いわゆる「これぞ私の作品だ!」という手応えを感じなければ、どんなに恵まれた環境で制作活動しても辛いもの。たとえ社会的に評価されたとしても、手応えがなければ自信は生まれない。それは自分の本性に従って創作しているどうかということで決まる。ついつい早く世に出ようするあまり、自分の個性ないものに手を染めると、後ろめたい気持ちが生まれて、美術への意味や価値を感じることができなくなるのだ。

それゆえに美術家の目標である作品を通じて鑑賞者たちとコミュニケーションする力が弱々しくなる。本当の自分らしい個性と出会おうとしなければ、いつまでも美術との関係は他人行儀のままだ。だからこそ、その人が先天的に持っているものを活かすこと、ありのままの自分でいることが大切になってくる。ただし、ワガママ放題や独りよがりになったら、美術の基準を見失うから迷うばかり。自分で自分がわからなくなって、ただただ迷走を繰り返すだけ。

つまり、この場合で言うありのままの自分でいることとは、いつも自分の才能を伸ばすために努力することを大前提としている。自分を磨くということと相補って初めて成立する。本当の自分の才能は何かを探し求めて創意工夫と試行錯誤していく。相田みつをの「トマトもメロンもそれぞれに自分のいのちを百点満点に生きているんだよ」という言葉どおり、本当の自分であることの厳しさから逃げ出さずに生きること。何があっても自分は自分であると思えるように自己と戦わなければならないのだ。